出典
日本経済新聞「EU、新入国審査制度を26年夏に限り緩和 数時間待ちの空港混雑に対応」(2026年7月8日) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR07BNQ0X00C26A7000000/、Tokutenryoko「EU|EES(出入域システム)の生体情報登録を今夏に限り一時停止可能に」https://www.tokutenryoko.com/news/passage/18553、SimVoyage「EU新出入国システム『EES』の導入で欧州の空港が深刻な混乱、最大5時間の遅延も」https://simvoyage.net/world-news/eu-ees-airport-delay/
要約
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、2026年4月から全面導入された新入国管理システム「EES(出入域システム)」について、今年の夏季ピーク期に限り運用を緩和する方針を示した。欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は7日、今年4月から全面導入した新入国管理システム「EES」について、今夏に限り審査手続きを緩和する方針を示した。非EU圏からの渡航者が入国時に数時間待たされるケースが相次ぎ、欧州の空港混雑の一因となっていたことへの対応となる。
具体的には、欧州委員会のマグヌス・ブルンナー移民担当委員は、混雑への対応として、各国が生体情報(指紋・顔写真)の登録を一時的に停止し、パスポート確認のみに簡素化する対応を認める考えを示しました。ただしEESの全面停止は認められておらず、対応の判断は加盟国・空港ごとに異なるため、渡航先・時期によって入国審査の所要時間が変動する可能性があります。
今回の方針表明は業界団体からの要望を受けたものだ。今回の方針表明は、欧州の空港運営団体(ACI EUROPE)、航空会社団体(Airlines for Europe:A4E)および国際航空運送協会(IATA)が2026年7月1日に連名でフォンデアライエン欧州委員会委員長宛てに送付した書簡を受けたものです。背景には、業界団体は、7月と8月のピーク期間には前2カ月間と比較して約4,000万人の追加の乗客が欧州の空港を利用すると予測しており、現在の状況が限界点に達していると警告していますという深刻な状況があった。
考察
EESは本来、非EU圏からの渡航者に指紋や顔写真などの生体認証データの登録を義務づけ、従来のパスポートへの手作業でのスタンプ押印を廃止する仕組みとして導入された。しかし生体認証データの初回登録に想定以上の時間がかかっていることや、空港における専用のセルフサービス端末の不足、そして何より入国審査官の慢性的な人員不足が重なり、システムの処理能力が旅行者の数に追いついていないのが実情で、一部空港では最大5時間程度の待ち時間が報告されている。
今回の緩和はあくまで夏季限定の応急措置である点に注意したい。制度上、EESは2026年4月10日に全面稼働しましたが、規則上、完全稼働後90日間(最大60日間延長可、2026年9月上旬まで)は加盟国の判断で運用を部分的に緩和できる仕組みが元々設けられています。つまり9月上旬以降は原則として厳格な生体認証登録が再開される見通しであり、根本的な人員不足やインフラ整備の遅れが解消されたわけではない。
航空業界からは繁忙期の混乱回避を歓迎する声がある一方、加盟国や空港ごとに対応がまちまちになることへの懸念も残る。すでに欧州各地の空港では長蛇の列や案内不足による混乱が報告されており、システム定着までにはなお時間がかかりそうだ。
日本人への影響
夏の欧州渡航は待ち時間短縮の可能性空港ごとに対応が異なり事前確認が必須9月以降は原則厳格運用に戻る見込み
この夏に欧州へ渡航する日本人旅行者にとっては、入国審査での長時間待ちが緩和される可能性がある点は朗報だ。特に乗り継ぎ便を利用する場合、これまでは生体認証登録に時間を取られ乗り継ぎに間に合わないケースも懸念されていたが、パスポート確認のみで済む空港が増えれば、こうしたリスクは一定程度軽減されるだろう。
ただし、対応の判断は加盟国・空港ごとに異なるため、渡航先・時期によって入国審査の所要時間が変動する可能性がありますという点は注意が必要だ。同じヨーロッパ旅行でも、訪れる国や空港によって審査の厳格さが異なる可能性があるため、出発前に最新情報を確認しておく安心感は変わらず重要となる。
また今回の緩和はあくまで今夏限定の措置であり、9月上旬以降は原則として通常の生体認証登録に戻る見通しだ。秋以降に欧州旅行を予定している場合は、再び入国審査に時間がかかる可能性を見込んで、乗り継ぎ時間に余裕を持たせるなどの対策を続ける必要があるだろう。

